【犬編】第4回:その他

呼び戻しができない

公園などで他の犬との遊びに夢中なとき、興味ある匂いがするとき、小動物を追いかけているときなど呼んでもなかなか戻って来ないことがあります。呼び戻しの訓練が不足している、家族の支配性が弱いなどが原因のようです。
ここでは呼び戻し訓練のやり直し策を記載します。

対処法

散歩に食べ物を持ち歩き、ご褒美に使う

  • 他に興味の対象がないようなときに戻るように命令します
  • 呼んですぐに戻ってきたときに食べ物を与え、おおげさに褒める(最初は食べ物を使って呼ぶのも一方法です)
  • 犬が好きなことをやめて戻ってきたら、優しく褒め、食べ物を与える
  • 訓練が進めば食べ物のご褒美を少なくし、褒める、撫でることを最大のご褒美にする


家族の感情を面に出さない

犬は家族の表情をよく観察しています。
戻って来たときに怖い顔をしていると次からは戻って来ません。

戻って来たときに罰を与えない
少し時間がかかっても戻って来たなら、罰を与えてはいけません。
戻って来たときに叱ったりすると「戻る=罰」と勘違いします。

すぐに引き綱を着けない

自由に遊ばせていた犬が戻って来たとき、まず撫でて、褒めて、"お座り・待て"をさせます。
それができれば食べ物を与え、少し待たせて引き綱を装着します。戻る=拘束されると勘違いさせないためです。

遊び、食べ物などをうるさくせがむ

うるさく遊びに誘ったり、食べ物をせがんだりする犬がいます。比較的若い犬に多いように思います。これの対処は簡単です。
合言葉は"無視"です。家族全員での無視が必要です。

対処法

「うるさくせがんでいるときは無視する」というルールを確立する
例外は許されません。また、一家揃って無視しないとその効果はありません。無視は厳格に行わなければなりません。一度でも要求に応じると元の木阿弥になります。

無視を継続する
無視を始めて2~3日は以前にも増してうるさくせがみます。しかし、無視を継続しなければなりません。

犬だけ残して部屋を離れる
すぐに止めるくらいに強く叱ることも必要です。心情的に無視できないときは犬だけ残してその部屋を離れることも一方法です。

無駄吠えをする

車・オートバイが通った、他犬が通った、チャイムが鳴った、電話がかかってきた……。
さまざまな刺激で無駄吠えをする犬がいます。共同生活を快適にするためになんとか止めさせたいものです。
対処法とケーススタディを紹介します。

対処法

無駄吠えを誘引する刺激を突き止める
無駄吠えの原因はさまざまです。攻撃的な性格、分離不安、遊びへの欲求、興奮を誘起する刺激、恐怖などです。 まずその刺激を突き止め、それを減らすようにしなければなりません。<

「静かに」の命令を教える

吠える素振りが見えたときに、即座に「静かに!」の命令を発し、犬を呼んで、"お座り・待て"をさせます。 よくできたら褒めて撫でてあげます。

家族の無意識の無駄吠え強化を改める

例えば、ケージの中の子犬が吠えます。それを止めさせようと、誰かが見に行ったり、ケージから出してあげたりします。これは、無駄吠えに報酬を与えていることになります。無駄吠えへの家族の反応、吠えることを止めさせようとする家族の行動が重要です。

ケーススタディ

音に対して無駄吠えをするとき
  1. 吠えることをすぐに止めるくらいの強い叱り方をする
    (命令になかなか従わない場合は服従訓練のやり直しが必要です=支配性の再強化です)
  2. 音を聞いても吠えなかったとき、あるいは命令に従いすぐに吠えることを止めたときは褒めて撫でてあげる
    (食べ物をご褒美として使っても良いのですが、他の場面で食べ物をご褒美にしないようにしてください)
  3. 少し訓練を進めた後、吠え出しそうな素振りが見えたときに呼んで"お座り"をさせる
    (既に吠え始めたときに呼んでも遅過ぎます)
  4. 吠えているときに、静かにさせようと撫でたり話しかけたりしない
    (無意識の強化になります)

性的な問題行動

最も多い性的問題行動はマウンティングです。来客にマウンティングするとこちらが恥ずかしい思いをします。多くは雄犬の問題行動ですが、発情前・発情中の雌犬にも見られます。
マウンティングは人間が想像するような好色な意味はありません。
欲求不満、過度の興奮が原因の転位行動(ある対象に向けられている感情・態度が別の対象に向けられる行動)です。
犬の心理として、仲間として受け入れるべきか、敵として攻撃すべきかの葛藤が生じるためのようです。

以下にいくつかの対処法を表示します。これらを組み合わせながら対処していきます。

対処法

去勢をする
去勢の効果は100%ではありません。行動矯正訓練も同時に行う必要があります。

性的行動の対象物を片付ける
性的行動の対象物(例えばぬいぐるみ、枕)を見えないところに片付けます。その後、対象物を徐々に見える場所に置くようにします。

葛藤を和らげる
来客が対象のときは来客に無視してもらいます(なかなか難しいかもしれません)。子どもが対象のときは犬を優しく扱う方法を子どもに教えます

他の行動をさせる
素振りが見えたとき、犬の気をそらすために他のことをさせます。命令を発して従わせる、庭に出して遊ばせるなどがあります。

性的行動に優しい言葉をかけない。面白がらない。
優しい言葉をかけたり、撫でたりすると問題行動を強化します。この行動を面白がるヒトがいますが、観察力の優れた犬にはこれも問題行動の強化につながります。

元気すぎる

「元気すぎる(活動性の亢進)」は、ときとして手のつけられない問題行動へとつながることがあります。犬が過度の興奮状態となり、制止を無視して吠える・飛びつく・噛むなどです。また、逃げる、自動車・バイクを追いかける、物を盗むなどもその根は活動性の亢進かもしれません。
非常にまれな例ですが、犬でも真性の活動亢進疾患が報告されています。多動症(過剰な活動性、訓練不能、攻撃的な姿勢・表情、落ち着かないなど)、注意欠陥疾患(いわゆるADHD)です。

元気すぎる犬は遺伝的に活動レベルが高かったり、ご褒美を与えられるために活動性が高まったりしていることが多いようです。若い犬は一般に成犬より遊び好きで活発です。しかし、これも成長とともに影をひそめるのが普通です。
いずれも、支配性を強化しつつ、服従訓練、行動のコントロールで矯正が可能です。原因をよく探して個々に工夫して対応しなければなりません。

対処法

メリハリをつけて犬と接する
メリハリをつけて犬と接することが重要です。メリハリをつけることで静かにすべきときを覚えさせます。

  • 運動と遊びの時間を設ける
  • ご褒美(食べ物、褒める、撫でる)を与えるのは、静かに落ち着いているとき、命令に従ったときだけ

犬の要求に応じない
静かにさせようと犬の要求に簡単に応じると、「元気に要求する=ご褒美がもらえる」と誤解します。

  • 犬がおとなしくなるまで無視する
  • 別場所へ歩き去る
  • 犬を別場所へ閉じ込めておく

服従訓練を行う
支配性強化のために服従訓練を繰り返します。興奮性が異常に高い犬は静かな環境で訓練を行います。
犬の注意をそらしたり、行動を中断させたりできるもの(犬の好きなおもちゃなど)を使って訓練すると上達が早いようです。
引っ張り防止器具、ヘッドホルダー、長い引き綱などの訓練用具が市販されています。必要であれば訓練の時に活用します。