【犬編】第3回:老齢犬の問題行動と対処法
老齢犬の問題行動とは?
獣医療、動物用医薬品の進歩により犬の寿命が延び、人間と同様に生活習慣病、腫瘍疾患、痴呆が話題になっています。また、老齢犬の問題行動も注目されるようになりました。老齢になって増加傾向を示す問題行動には、夜鳴き、分離不安、排泄の失敗、破壊行動、恐怖症などがあります。
老齢犬はストレスに対して感受性が高いのが特徴です。環境の変化、身体的変化(老化)、あるいは病気が不安を増大し、その不安が問題行動に結びつきます。その上、加齢による変化は一般的に進むばかりで元に戻ることはありません。
なお、年齢とともに少なくなる問題行動もあります。興奮性、服従性に関わる問題行動です。老齢犬は家族の命令をよく聞きますし、過剰な興奮が少なくなります。
加齢に伴う身体的変化
加齢に伴う身体的変化(老化)と代表的な行動を表示します。
身体的変化(老化) | 代表的な行動 |
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全身代謝 |
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消化器 |
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呼吸器 |
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泌尿器 |
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骨・筋肉 |
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神経 |
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感覚 |
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老齢犬のさまざまな問題行動への対処法
老齢犬のさまざまな問題行動への対処法を表示します。健康状態・運動能力・認知障害のレベルに応じて環境を整えることが必要です。
問題行動の背後には何らかの病気(基礎疾患)があるかもしれません。動物病院で調べてもらい、もし病気が見つかれば治療を受ける必要があります。
問題行動を引き起こす誘因、あるいは強化している刺激があるかもしれません。それを突き止めて、できるだけ排除してあげることも大切です。
対処法
ストレスによるさまざまな問題行動
- なるべくストレスを受けないように配慮する
老齢犬はストレスに弱い傾向があります。大きなストレスを受けると、食欲不振、破壊行動、無駄吠えなどが誘発されます。 - 大きな変化が予想される場合は、その変化に徐々に慣らしていく
何らかの事情で一緒に過ごす時間が急に短くなると、老齢犬はとたんに落ち着かなくなります。
場合によっては、極度の分離不安に陥るかもしれません。
排泄の失敗
- 外に出す回数、散歩(短めの散歩)の回数を増やす
- 排泄場所を工夫する
- 痛みを和らげる薬剤を使用する
犬の生活サイクルを再考する必要があります。関節炎、筋肉の衰えがある犬は、その意志はあっても排泄場所までたどり着けないこともあります。
人への攻撃性
- 犬に感覚障害があることを知らせ、近づく際は注意してもらう
- 訪問者がいるときは、犬を静かで落ち着ける場所に置いておく
家族以外の他人を怖がる犬は、人が近づくと自ら避けることを学習しています。ところが、老齢犬は耳や目の機能が低下しています。他人が近づいて来ることになかなか気づきません。突然すぐ近くに人が出現したように感じ、驚きのあまり防御的攻撃を仕掛けることがあります。
同居犬への攻撃性
- 家族がよく目を配る
- 子犬の行動が度を越しそうなときは家族が中断させる
- 別々に離して生活させる
老齢犬のいる家庭に子犬が新たに加わったときはどうでしょう。若いときなら、子犬と一緒に遊び、いけないことをしたときは軽く噛むことでたしなめることもできました。しかし、子犬の活発さについていけないほど衰えているときもあります。子犬をわずらわしく感じ、過度の攻撃に至ることもあります。 - 順位の明確化を促す
(老齢犬には申し訳ないのですが、犬自身がつけた順位を尊重し、順位の高い方を必ず優先します)多頭飼育の場合、順位にかかわる問題も発生します。それまでボスの座にいた犬に衰えが見えると、ボスの座をめぐっての争いに発展することがあります。家族が介入して老齢犬の味方をすると問題はさらに複雑化します。
浅い眠りと夜鳴き
- 適度な運動・遊び、家族との十分な触れ合いに配慮する
犬は短いサイクルで眠ったり起きたりを繰り返しています。老化によるさまざまな変化はこのサイクルをも狂わせます。落ち着かない、ちょっとした物音を怖がるなどが見られるようになり、ついには夜鳴きとなるかもしれません。