【猫編】第2回:マーキング
マーキングとは
猫が尾を立てて垂直面に少量の尿をスプレーすることがあります。これがマーキングです。主として雄猫の問題行動ですが、雌猫にも見られます。室内のマーキング場所は主として家・部屋の入口や家の中の通路です。
スプレーした尿には他の腺分泌物が混じり、性別、年齢、ホルモン状態、一般的健康状態などの情報が含まれています。
マーキングの一番の問題は独特の強烈な臭いです。マーキングは主として尿ですが、糞を利用することもあります(ミドニング:middening)。下顎下頬・口周囲腺からの分泌物をなにかの突起に付けるのもマーキングの一種です(バンティング:bunting)。爪研ぎも視覚と嗅覚両方に訴えるマーキングです。
ここでは最も多発する"尿によるマーキング"への対処法を紹介します。
"尿によるマーキング"への対処法
マーキングの意義
- 交配相手に自分をアピールする性的行動
- 競争相手に自分の存在を誇示する防衛・威嚇行動
- 不安・葛藤を解消する転位行動
マーキングは去勢によって低減する、雌猫が同居している場合に多いという知見は、マーキングが交配相手への情報提供を目的とした性的行動の一種であることを示唆しています。
猫は縄張りを持っています。家とその周辺がテリトリーです。近隣の猫を縄張りに侵入させないように、あるいは許せない範囲に近寄らせないように競争相手に自分の存在を誇示します。
マーキングは、新しい猫や犬や人が家族に加わったり、新しい物品(家具、電化製品など)が室内に現れたり、家族がかまってあげられない事情ができたり、つまり猫が不安を感じる出来事がきっかけになることがあります。マーキングは不安・葛藤を解消する転位行動でもあります。
一般的対処法
- 去勢・不妊手術をする
- 猫が脅威と感じるものをできるだけ取り除く
- スプレーされた場所は徹底的にきれいにする
- スプレーされた場所に食べ物を置く
- 家族からの罰は与えない
- スプレー行動を見つけたときの家族の反応が行動強化になっているときは(疑いがあるときも含む)、スプレー行動を無視する
猫が脅威を感じる状況をできるだけ回避するようにします。縄張りの中が安全であることを感じさせるのです。例えば近所の猫が室内から見えないようにしたり、他の猫が縄張りに入ってこないように工夫したりします。
スプレーは決まった場所にする傾向があります。前の臭いが刺激となり繰り返されるのです。スプレー跡は徹底的な掃除が必要です。水分を拭き取り、酵素洗剤・生物洗剤での洗浄が基本です。猫の習性を利用してスプレー場所に食べ物を置く方法もあります。
罰は無意味な場合が多く、スプレー行動をさらに悪化させることもあります。どうしても必要な場合は隠れたところからの水鉄砲、あるいは大きな音など巧妙な手段を使い、家族からの直接的な罰は避けます。無意識に家族がスプレー行動を強化していることもあります。
スプレー行動を見つけたときに猫をかまってあげると行動強化につながります。行動強化が疑われる場合は無視することも必要になります。ご褒美(かまう、褒めるなど)を与えるのは、スプレー行動を躊躇したとき、やらなかったときだけです。このようにして良い行動は強化します。
去勢・不妊手術は効果的です。その効果は、雄猫で90%、雌猫で95%との報告があります。
ケーススタディ
- マーキング場所に食器(少量のドライフード)を置く
- マーキング場所に猫を驚かす物(ネズミ捕りなど)を置く
- マーキング場所を大きく模様替えする
- 市販の忌避剤を使用する
- 改善が見られないならケーススタディ(2)へ
- ケーススタディ(1)の対処法を行う
- 去勢・不妊手術を行う
- 動物病院に薬物療法を相談する