【犬編】第5回:怖い・犬の感染症(3)

はじめに

本コーナーの第5回目は、最近ニュース等でたびたび話題となった犬のブルセラ症について解説します。

ブルセラ症

症状

ブルセラ症は、ブルセラ属の細菌を原因とする人と動物の共通感染症で、感染した犬の家族や獣医師が感染したなどの報告もあり、人への感染にも注意が必要な感染症です。
そのため家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病(犬は対象外ですが)、感染症法における四類感染症に指定されています。人が感染すると、発熱や悪寒、倦怠感などカゼに似た症状を示します。

原因菌はBrucella canis(イヌ流産菌)という細菌で、交尾や流産時の汚物などから感染します。症状は、メスでは妊娠後期の流産、オスでは精巣炎や前立腺炎などがみられ、受胎率の低下や不妊となります。ですが多くの場合、異常と認められる症状を示さないため、気づかずに繁殖させることで感染を拡大させてしまう場合があります。
また、ブルセラ症はイヌ流産菌以外に、山羊や羊のB.melitensis、牛のB.abortus、豚の B.suisがあり、こちらの菌の方が感染力が強く家畜伝染病予防法の対象となっています。

治療法

治療には、テトラサイクリン系という抗生物質の長期投与での成功報告がありますが、細菌が細胞内に寄生するため、うまく排除できず再発することがあります。
また、たとえ治療に成功してもオスは不妊のままの場合もあり、完治は困難です。

予防

残念ながらワクチンはなく、犬を購入する際は、死流産の発生のない信頼できるブリーダーやペットショップを利用しましょう。
人への予防は、犬とキスするといった濃厚な接触は避け、触れ合った後は石鹸等での手洗い、うがいを心がけましょう。