【犬編】第4回:犬のカゼ

はじめに

本コーナーの第4回目は、「ノンコアワクチン (全ての犬に必要なワクチンではないが、必要に応じて接種が推奨されるワクチン)が対象とする感染症」に分類される上部気道感染症であるケンネルコフについて解説します。

ケンネルコフ

症状

ケンネルコフは、犬舎を意味する「ケンネル」と咳を意味する「コフ」に由来する名称で、主に伝染性気管支炎や咽喉頭炎などを原因とする上部気道感染症の総称です。
このケンネルコフは、ボルデテラ・ブロンキセプチカや犬パラインフルエンザウイルス、さらには犬アデノウイルスなどの病原体の混合感染が原因とされています。

■ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica;B.b)
ボルデテラ属に属する細菌感染症は、Bordetella pertussisを原因とする人の「百日咳」が有名です。B.b.はこの細菌より宿主域が広く、犬だけでなく牛、豚、猫、ウサギ、モルモットなどの多くの哺乳類、さらには人にまで感染することが明らかとなっており、特に豚では「鼻曲がり:萎縮性鼻炎」の原因菌として知られています。

治療法

本感染症は治療の必要ない軽度の症状の場合もありますが、激しい咳の緩和のための鎮咳薬の吸入治療や投薬、二次感染予防対策として抗生物質投与などの対症療法が行われます。
さらに体力の回復のための点滴や栄養剤等の投与を行い、免疫力の向上をはかる場合もあります。
集団飼育をしている場合には、他の感染症と同様に感染した犬の速やかな隔離と徹底した消毒を行う必要があります。

予防

この疾病は、感染した犬の咳や唾液などによる飛沫感染で拡大すると考えられます。そのため集団で発生することが多く、犬が集まるところ(ブリーダー、ペットショップ、ペットホテル等)への同行を避けることが重要です。また、寒く空気が乾燥する冬は気道粘膜の働きが弱くなることで発症しやすくなるため、適切な温度と湿度の管理も重要となります。

またケンネルコフはいろいろな病原体が関与しているのでワクチンで犬のカゼを100%予防することは困難です。しかし、接種しておくことで症状緩和に役立ちます。

犬アデノウイルスは「犬の感染症 第2回」、犬パラインフルエンザウイルスは「犬の感染症 第3回」をご参照ください。