【猫編】第1回:猫のカゼ

はじめに

細菌やウイルスのような病原体の感染によって起こる病気を感染症といいます。人には人の感染症があるように、猫には猫の感染症があります。これから3回にわたり、猫の感染症とその予防法についてお話します。

猫の伝染性呼吸器症候群—猫のカゼ—

伝染性呼吸器症候群は一般的に見られる猫の感染症で、いわゆる猫の「カゼ」です。正確に言うと、猫には「カゼ」という病名はありませんが、ここでは便宜的に「カゼ」と呼ばせていただきます。さて、人のカゼと同じように猫の「カゼ」もウイルスや細菌といったいくつかの病原体の複合感染によって起こります。その中でも猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスが猫の「カゼ」の原因となる代表的な病原体です。これらのウイルスが喉や気管のような呼吸器に感染して病気を引き起こすわけです。

発症した場合の主な症状はくしゃみ、鼻水、流涙(涙目)、口内炎などです。これに伴って、熱が出たり、食欲不振になったりします。
軽症の場合、1,2週間程度で回復しますが、子猫や老猫、他の病気で体力が落ちている猫が感染すると、症状が悪化し死亡することもあります。一見たいしたことのない症状なので、気付くのが遅くなりがちですが、上記のような症状を発見した場合は、早めに動物病院で診てもらいましょう。

「カゼ」の原因となるウイルスは感染した猫の唾液や鼻水、涙に出てきますので、健康な猫が感染猫に直接触れたり、くしゃみで飛び散った唾液や鼻水に触れたりすると感染してしまいます。複数頭の猫が家庭にいる場合は、特に注意が必要です。ちなみに、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスは、ウイルスの名前に「猫」がついているとおり人には感染しません。したがって、猫の「カゼ」が人にうつることはありませんのでご安心ください。
しかし、人と猫に共通で感染する病原体もあります。猫との接し方には節度を持ちたいものです。

猫が「カゼ」をひいてしまった場合、治療は対症療法が中心になります。発熱や食欲不振で弱っている猫には皮下補液や静脈点滴を行います。「カゼ」は複合感染の場合が多いので、細菌の感染を抑えるために抗生物質を投与します。

猫の「カゼ」の一番の予防策はワクチンの接種です。ワクチンには、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスといった猫「カゼ」に対する予防効果があり、さらに接種しておくことにより、仮にかかってしまっても症状の緩和が期待できます。

ところで、海外でのお話ですが、非常に致死率の高いカリシウイルスが現れているそうです。しかも従来のワクチンでは効果がないということです。たかが「カゼ」と侮ることは禁物です。