【猫編】第3回:攻撃行動

攻撃性

猫が攻撃する対象は、家族、お客さん、同居している他の動物、近所の猫などです。鋭い爪と牙で相手にキズを負わせる危険性がありますので、猫の攻撃行動は矯正したいものです。

猫に攻撃行動が見られたときは、その前兆・引き金を見つけ出すこと攻撃性に拍車をかけないことが対処の重要なポイントです。「攻撃性に拍車をかけない」とは、攻撃的になったときに優しい言葉をかけたり、撫でたり、つまり行動を強化するご褒美をあげないことです。

攻撃行動にはさまざまなタイプがあります(下表)。遊びが高じて、あるいは恐怖からの攻撃が多いようです。前者は積極的、後者は防御的な攻撃行動です。
元来、猫は捕食動物ですので、その習性による攻撃行動もあります。新しい猫を迎えたときは、地位をめぐって、あるいは縄張りをめぐっての攻撃行動が見られることもあります。猫同士の喧嘩の仲裁をしようとして人が攻撃されることもあります(転嫁行動)。痛みのある部位を触られることを嫌がっての攻撃行動、子猫を守ろうとしての母猫の攻撃行動(母性行動の一つ)などもあります。

攻撃行動のタイプ

(1)遊びが高じて
(2)恐れから
(3)捕食行動の延長として
(4)地位・縄張りをめぐって
(5)その他(転嫁行動、母性行動など)

タイプを特定するポイントは、前後の関係、初めて見られた時期、年齢と性別、そのときの猫の姿勢と鳴き声、攻撃される側の特徴などです。

例えば、「鳴き声を発することなく家族に近づき、飛びかかって優しく噛むことがある」場合はどうでしょう。枠内のタイプを考えますと、(2)(4)(5)ではないようです。(1)か(3)と考えられますが、キーワードは"家族"と"優しく噛む"です。捕食行動では対象が小動物・昆虫などがほとんどですし、まさに狩猟ですから行動が抑制されず"優しく噛む"ということもありません。

結論として例示した攻撃行動は"遊びが高じて"と推測されます。代表的な攻撃行動として「遊びが高じての攻撃行動」「恐れからの攻撃行動」を紹介することにします。

遊びが高じての攻撃行動

素因・原因

  • 子猫、または若い猫に多い
  • 子猫時代に荒っぽい経験を仕向けられた
  • 単頭飼育
  • 家族との荒っぽい遊び
  • 一人で過ごす時間が長い

遊びが高じての攻撃行動は、子猫、あるいは若い猫でよく見られます。特に活発で遊び好きの猫に多い問題行動です。声を出すことは少なく、咬み方も甘咬みがほとんどです。
子猫時代に手や足を追いかけ、襲うように仕向けられたり、家族がからかったり、荒っぽい遊びに誘ったりした結果として攻撃行動となることがあります。
人や他の猫と遊ぶ時間が少なく、一人ぼっちが多いことも原因となります。家庭内で1頭だけで飼育された場合、他の猫とのコミュニケーション不足から、新しく迎えた猫に攻撃的になることがあります。

一般的対処法

  • 攻撃的な遊びをしない、させない
  • 動くおもちゃなど他の物に遊びを仕向ける
  • 水鉄砲、音のする物で矯正する(体罰を与えるのではなく、あたかも神の仕業のように)
  • 同年齢、同じような性格の猫をもう1頭招く

ケーススタディ

1. 攻撃行動が見られたら、ただちに水・音などで罰を与える

  • 罰の強さは、猫が恐怖心を持たずに行動を止める程度
  • 行動後1-2秒以内に罰を
  • おもちゃを使って気をそらせることも一つの方法

2. 遊び&運動の時間を毎日設け、遊んであげる

3. 猫が一人で遊べるおもちゃ(光るボール、動くおもちゃ、音のするおもちゃなど)を与える

恐れからの攻撃行動

恐れからの攻撃行動の対象は通常は他の猫です。知らない人、物音、子供、家族、他の動物などにも恐怖を感じ、防御的な攻撃をすることがあります。他の猫以外の恐怖の対象は家族の特定メンバーであることも多いようです。

恐れからの攻撃行動にはシグナルがあります。シャーッと声を出す・ 唸る、歯をむき出す、耳を寝かす、うずくまる、尾を丸め込むなどです。そのシグナルは特徴的で恐怖からの攻撃行動であることが容易にわかります。

威嚇されたとき、恐れを感じたとき、猫は「引き下がる」「動かない」「かわす・なだめる」という反応を示します。しかし、恐れがある限度を超すと防御性攻撃へと転じます。恐れから動かなくなった猫は、その姿勢から攻撃してくることはほとんどありません。
しかし、さらになんらかの刺激が加わると攻撃的になることがあります。たまたまそこに居合わせた何もしていない人に攻撃を転嫁することもあります。

素因・原因

  • 恐れへの感受性が高い
  • 恐い経験を学習して
  • ストレス(縄張りの侵害、罰、閉じ込めなど)がある
  • 不適切な罰、不適切な社会化
  • 猫の習性を理解できていない


恐れには限界があり、個体差がかなりあります。ある猫では1m以内に近づかないと攻撃行動は見られないのに、別の猫では対象が3m先に見えただけで攻撃的になることもあります。品種による傾向はないようです。

恐怖による攻撃行動は、ほとんどの場合は過去の恐ろしい経験が学習された結果です。
薬を無理に飲まされたことで嫌な思いをした猫は、薬ビンを見ただけで逃げますし、それを追い詰めると攻撃されることがあります。我慢できないストレスにさらされ、かつ逃げ場がなくなると攻撃行動へと移ります。その他、猫の習性を理解しないままの罰も原因の一つですし、社会化がうまくいかなかったときも恐怖への感受性が高くなって攻撃的になる猫もいます。

一般的対処法

  1. 恐れの原因を特定する
  2. 恐れの限度(強さ、距離など)を知り、それを避ける
  3. 攻撃対象(例えば特定の人)に慣らす
脱感作法
ある特定の人が3m以内に近づくと恐れて攻撃的になる猫に対しては、まずは遠くに特定の人が見えるようにし、徐々にその距離を縮めて慣らす。

氾濫法
猫をケージに入れ、恐れ・攻撃がなくなるまで同じ部屋に特定の人といっしょにさせる
(恐れの反応が軽度の場合だけ)

ケーススタディ

(1)家族の特定メンバーが対象の場合

  1. 罰を与えることを止める
  2. 無理強いをしない(猫が自ら近づくことを待つ)
  3. 自ら近づいたときに食べ物を与え褒める(褒美を与える)
  4. 猫が休息中は近づきすぎない
  5. 撫でているとき、猫が嫌がる素振りを見せたらすぐに止める
  6. 他のメンバーは一時的にその猫を無視する


(2)他の同居猫が対象の場合

  1. 別部屋で暮らさせる
  2. 部屋をネットなどで仕切る(相手が見え、匂いを嗅げ、声も聞こえるように)
  3. 暮らす場所を毎日交換する
  4. 仕切りからまずは離れたところに食事、水を置き、徐々に仕切りの近くに置く
    (猫の気持ちを尊重して焦らずに)
  5. お互いに良好な関係になったら仕切りをはずす
    (当初は短時間とし、徐々に長くする)
※ ネットではなく、一方をケージに入れる方法もあります